1.『未来会計』とは
未来会計という言葉自体は造語であり明確に定義されている言葉ではありません。その為、書籍や監査担当者ごとで考え方に差異はあるかもしれませんが、大筋はその名の通り会計(数字)を用いて将来の計画策定や課題の検討を行い、対応策の実行・進捗管理を行うことを指します。
既述した過去会計は、確定した過去の実績に基づいて作業を行うのに対して、未来会計は未確定の将来に対して数字を用いてアプローチを行うことになります。
次に検討すべき将来の検討事項にはどのようなことがあるかを例示します。
2.検討事項例① 現進行期の決算予想
過去の実績や現状の見通しを基に1年後の決算の利益着地予想や納税予想を検討します。
検討事項例
~利益はどのくらいか、その場合の納税額、納税原資は問題ないか
当期から消費税課税事業者となる場合どれくらい納税が見込まれるか
翌期は借入申込みを検討しているため黒字着地としたいが可能か
経費で前倒し(又は繰延)ができるものはないか
所得拡大税制を適用する為にはどのような給与計画が必要か など
何の計画も立てずに決算を迎えてしまい、上記の検討事項について、もっと早くに検討していれば何か策を講じられていたのにというケースは少なくありません。
3.検討事項例② 事業承継に向けた計画の策定
社長の平均年齢が約62歳といわれる昨今で、代表者交代というテーマは多くの法人で身近なものです。
社長が〇歳までに勇退したいと考えているときに、そもそもそれが現実的なのか。またそれを実現させるために今年、5年後、10年後までにそれぞれ何をしていなければならないのかを可視化することは非常に重要です。
検討事項例
~後継者…そもそも候補者はいるのか、それは親族か第三者なのか
株式…社長が持っている株式をどのように次代へ移していくのか
そもそも本当に移すべきか(決定権はしばらく現社長が持っておくべきでは?)
外部株主がいるのであればこれを機に整理できないか
その他検討しておくべきこと
…社長の固有業務の引継ぎ、社内の周知、取引先への周知、代表者債権債務の整理、
役員退職金の検討、社長の勇退後の生活原資に問題はないか、その他法定上の手続き など
4.検討事項例③ 法人の将来について
法人を運営をする上で、社長には思い描く目標が必ずあるものと存じます。
それは年商〇〇万円を達成したい、役員報酬を〇〇万円とりたい、雇用を増やして社会貢献を果たしたい、子どもに将来会社を引き継ぎたい等様々だと存じます。
これらの目標について、ただ漠然とこうなりたいと思うのではなく、その目標を達成するために必要なことをまずは可視化し、計画表に落とし込んでその進捗を管理することは非常に重要です。
検討事項例
~年商目標…売上目標の策定、販路拡大の模索、商材(サービス)内容の見直し
社長一人では限界がある➡必要な人材の育成計画の策定
役員報酬…目標額の為にはいくら売上が必要か
粗利益率の見直しやその他の固定費の見直しの実施
雇用拡大…事業規模の拡大や、人材定着のための風土づくり
5.まとめ
計画は策定するだけでは意味が無く、達成状況や進捗状況を管理することで初めて効果を発揮します。会計事務所との毎月の打ち合わせに将来の検討事項を追加してみてはいかがでしょうか。
将来の事項を検討するうえで最も重要なことは、「社長の思い描く将来像を監査担当者と共有すること」にあると考えております。
こうなりたいという目標を達成するために、もしくはある課題を解決するために、中長期的な計画の策定『未来会計』に取り組んでみてはいかがでしょうか。
<文責>
札幌事務所 青山
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