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2021.07.27|会計

暦年課税とは?注意点や相続時精算課税の違いについて解説

相続税を少なくし節税効果を上げるにはどうしたらよいか、財産の贈与や相続の問題でお悩みの方も多いのではないでしょうか。

相続の課税方式には「暦年課税」や「相続時精算課税」などの制度がありますが、それぞれのしくみや違いについてしっかりと理解することは簡単ではありません。

この記事では暦年課税について、また相続時精算課税との違い、暦年課税を選んだ方が良い人、暦年課税における注意点や申告方法などについて解説します。

1.暦年課税とは

暦年課税は贈与税に対する課税方式の一つです。暦年というのは、1月1日から12月31日までの1年間を指し、この期間に行われた財産の贈与に対して課税されるのが暦年課税です。

対象となる財産は、現金や預貯金、有価証券、不動産などあらゆる財産が含まれます。ただし、基礎控除額が一人当たり年間110万円と定められているため、110万円以上の贈与を受けた場合は申告が必要となり、110万円を超えた課税価格に贈与税がかかります。

贈与が1年間の間に複数回にわたって行われた場合や複数人から贈与された場合でも、その合計が110万円を超えなければ贈与税はかからず、申告も必要ありません。また、贈与者や受贈者についての制限がないため、だれでも利用できるのが特徴です。

暦年課税の税率は課税価格に応じて10%~55%と定められています。

2.暦年課税と相続時精算課税の違い

贈与税の課税方式には、「暦年課税」のほか「相続時精算課税」があります。相続時精算課税は、贈与税の負担を軽減して、財産の移転を促進する目的でつくられた制度です。贈与者一人について2,500万円まで課税されませんが、相続税は別途かかります。

適用要件は、60歳以上の父母または祖父母から20歳以上の子または孫に贈与を行う場合となり、暦年課税か相続時精算課税のいずれかを選ぶことができます。

この場合も、贈与する財産の種類、贈与回数、金額に制限はありません。税率は贈与額から特別控除額2,500万円を差し引いた金額に対して一律20%となっています。

暦年課税と相続時精算課税の違いは下表のとおりです。

 

暦年課税

相続時精算課税

贈与者の適用要件

制限なし

贈与をした年の1月1日現在、60歳以上の父母または祖父母

受贈者の適用要件

制限なし

贈与された年の1月1日現在、20歳以上の子または孫

非課税限度額

受贈者一人につき年間110万円

贈与者一人につき2,500万円

贈与税の計算

(贈与額−110万円)×超過累進課税(10〜55%)

(贈与額−2500万円)×一律20%

贈与税の申告

贈与額が110万円を超えた場合に申告

金額に関わらず、贈与税申告書と相続時精算課税選択届出書を提出する

贈与者が死亡した場合

相続時の加算はなし。ただし、受贈者が相続人等の場合、相続開始前3年以内に受けた贈与財産は、相続財産に加算する。

贈与財産はすべて、贈与時の価格で相続財産に加算する。

回数制限

なし。ただし、相続時精算課税を選択後は、使用できない。

なし。一旦選択すると、相続時まで継続。

 

暦年課税がおすすめな人

暦年課税と相続時精算課税は必要に応じて選ぶことができますが、どのような人が暦年課税に向いているのでしょうか。

結論としては、長期的に資産移動をしたい人や贈与の対象者が多い人は暦年課税を選んだ方が良いと言えるでしょう。以下に、詳しく説明します。

・長期的に資産移動をしたい人

暦年課税は毎年110万円以内の贈与なら課税対象とならないため、長期間にわたり少しずつ資産を移動したいという人に向いています。110万円というと小さな金額に思われるかもしれませんが、10年間では1,100万円、20年間では2,200万円を無税で、親から子などへ資産移動が可能です。子どもが2人なら、20年で4,400万円の資産を非課税で移動できることになります。

・贈与の対象者が多い人

暦年課税の場合、贈与対象者の人数制限もありません。したがって、贈与対象者の人数が多いほど、一度で多額の資産を非課税で贈与できます。例えば、110万円を贈与したい人が10人いれば、一度に1,100万円、20人いれば2,200万円を贈与が可能です。

3.暦年課税で気をつけるべきポイント

暦年課税の非課税枠を使い資産を贈与していく場合、贈与したのに税務署に認められないなど、せっかくの努力が無駄になってしまう場合があります。こうしたことが起きないように、暦年課税で気をつけるべきポイントを解説します。

長期的な贈与の証拠を残す

110万円以内で贈与を受けた時、必ず贈与されたという証拠を残しておくことが大事です。相続税で税務署から調査されたときに「実際に贈与されたのか」という点がチェックされます。

このような疑いをもたれないように、毎年110万円以内の金額を贈与されていたという証拠を残しておきましょう。

毎年贈与契約書を作成して保管するとともに、振り込み送金により出金と入金がわかるようにしておく、領収証を発行してもらい証拠として残しておくなどの対応が必要です。

贈与後の通帳管理は任せる

被相続人が相続人へ資産を贈与する場合、相続人名義の通帳は相続人に管理させることが大事です。被相続人が相続人名義の通帳を作ったり資産の移動・通帳管理までを一貫して行ったりしていると、その通帳が被相続人の名義ではなくても預金が相続税の対象となってしまいます。

このような預金を名義預金と言い、贈与とみなされないことになります。贈与とみなされるには、相続人が通帳を自分で作り、もらった財産の管理、すなわち通帳の管理も自分で行うことが大切です。

相続開始前3年以内の生前贈与は節税効果がなくなる

被相続人(資産の贈与者)から毎年贈与されていた人が法定相続人である場合、被相続人が死亡すると、死亡前の3年間における生前贈与はなかったことになり、相続財産とみなされます。

したがって、この3年間の財産は暦年課税の対象ではなく、相続税の課税対象となるのです。つまり、贈与税における毎年110万円の基礎控除は適用されないため、節税効果がなくなることになります。

被相続人の余命があまり長くないと考えられる場合の節税対策としては、相続人の配偶者に生前贈与することも選択肢の一つです。

4.暦年課税の申告方法

暦年課税の申告方法は、下表のとおりです。

項目

説明

申告の対象者

前年の1月1日から12月31日までの1年間に財産の贈与(法人からの贈与を除く)を受け、その財産の価額の合計額が基礎控除額(110万円)を超える人

申告時期

財産を受贈した翌年の2月1日から3月15日まで

申告場所

贈与を受けた人の住所を所轄する税務署

申告書類

贈与税申告書、贈与を受けた人の戸籍の謄本または抄本、戸籍の附票の写し、登記事項証明書などで贈与を受けた人が控除の対象となった居住用不動産を取得したことを証する書類

 

贈与税の申告書は国税庁のウェブサイトからダウンロードすることも可能です。

5.まとめ

節税効果を上げるために、暦年課税を利用して基礎控除額の110万円以内で毎年少しずつ資産を贈与するという方法は、一般的によく行われています。しかし、暦年課税も注意しないと贈与とみなされず、相続税を払うことになるなど、努力が無駄になることもあります。

暦年課税や相続時精算課税のことでどうしたらよいかと迷った場合や、相続について悩んでいる方はは、相続を専門に扱う税理士に相談してみるのが良いでしょう。

※当社では、顧問契約を締結しているお客様以外の個別の税務相談には対応いたしかねます。何卒ご了承ください。

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