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スタッフコラム

東京事務所
2024.09.30|お知らせ

ポイ活の税金のモヤモヤ

ポイントを貯めて賢く使うポイ活(ポイント活動)は、ネット化が進んだ現代生活でとても身近になっています。
クレジットカードやキャッシュレス決済で普段の買い物をするだけでポイントが貯まり、また毎日歩くだけでポイントを獲得できる歩数計アプリ等もあり、多くの人が気軽にポイ活を楽しむことができます。ポイ活を節約術や副業として意識し、積極的にポイントを貯めているポイ活上級者もいます。
ポイ活で一定額以上のポイントを利用した個人は所得税と住民税(以下「所得税等」とします)がかかることがあります。ポイントをめぐる税務は既存の法令の中で一定の解釈がなされ、また一定のケースについては国税庁より見解が示されているものの、ネット上では様々な解釈が飛び交い、個人納税者それぞれが自分のケースに合わせて申告したり、または申告不要を判断したりしているのが実情でなないでしょうか。
本コラムではポイントの所得税等について、私見も交え留意点と疑問点を整理してみました。

1.ポイントが所得税の課税対象になるタイミング

 ポイントは取得したときではなく、使用したときに所得税等の課税対象になるとされています。つまりポイントを獲得して保有しているだけでは課税対象にならないのですが、ポイントを使って商品やサービスを購入した場合で、そのポイント使用が値引きではなく無償で経済的利益を受けたと判断されるときに課税対象になります。この点は所得税の原則的な考え方と変わるところはありません。

2.ポイント使用時の課税の有無

(1)課税対象とならないポイント使用

家電量販店で買い物をしたときに付与されるような買い物の決済代金に応じて付与されるポイントで普通に買い物をした場合は、値引きを受けたと判断されるため課税対象にならないとされています。ただし、買い物の決済代金に応じて付与されるポイントでも、そのポイントを株式や投資信託などの金融商品の購入代金に充てた場合には、商取引による値引きではなく譲渡と判断されるため課税対象になるとされています。

逆に、課税対象にならないとされるもの以外のポイント使用は課税対象と考えておけば間違いないでしょう。

 

(2)課税対象となるポイント使用のうち申告(と納税)が必要になるケース

ポイント使用で課税対象となる場合の所得区分としては、一時所得、雑所得になる場合が考えられ、どの所得区分に該当するかは納税者がそれぞれケースに応じて判断することになりますが、次のケースは申告が不要とされています。

まず、一時所得に該当するものについては、所得金額の計算上、特別控除額50万円を控除できるので50万円を超えない限り確定申告をする必要がありません。

また、雑所得に該当するものについては、1か所から給与を受けていて、その雑所得と他の所得との合計額が20万円を超えない限り確定申告をする必要はありません(住民税についてはこの規定はありません)。

これらの規定は日常的に発生しうる所得に対して納税者の利便性を考慮して設けられているものですが、ポイ活を積極的に行う上では留意しておく必要があります。

3.ポイントで買い物をしたときの取り扱いの疑問

上記2の(1)で示したとおり、ポイントで買い物をした場合は、値引きを受けたと判断されるため課税対象にならないとされていますが、全額をポイントで払った場合はどのように考えればよいのでしょうか。その場合は対価がないのでもはや値引きとは言い難く、企業から消費者への無償譲渡による利益(経済的利益)として、全額を個人の課税対象と考えるのが無難でしょう。

では、1円だけを現金で支払って残りをポイントで支払った場合はどうでしょうか?1円でも対価があれば残額を値引きと言ってしまえるのだとしたら、無償譲渡による経済的利益による課税を1円を支払うことで避けることが可能になり私としては違和感を感じます。

4.一時所得となるふるさと納税の返礼品との関係

お得という点では、ふるさと納税とその返礼品もポイ活の税金に関係します。ふるさと納税をしたときの返礼品に係る経済的利益は一時所得に該当するので、一時所得に該当するポイ活の経済的利益を受けた個人は、ふるさと納税の返礼品のような一時所得に該当する所得を合算して申告の要否を判断する必要があります。なお、一時所得の例示として次のようなものがあります。

  • 懸賞や福引きの賞金品
  • 競馬や競輪の払戻金
  • 生命保険の一時金や損害保険の満期返戻金等
  • 法人から贈与された金品
  • 遺失物拾得者や埋蔵物発見者の受ける報労金等
  • 資産の移転等の費用に充てるため受けた交付金のうち、その交付の目的とされた支出に充てられなかったもの

5.まとめ

ポイ活でも身の回りで通常発生するものについては、一定の金額までの申告不要の制度により税金の心配をすることはありませんでした。つまり、ポイントが値引きなのか一時所得なのか雑所得なのか、また申告や納税が必要なのかについて、頭を悩ませなくても良いように配慮されていると言えます。

しかし積極的にポイ活を行うことで一定の金額を超えてしまいそうな場合は、納税者自身がポイントをどのように取得しどのように使ったかを自らで記録して申告の有無を判断する必要がありそうです。その煩雑さを考えると見合わないと考える人も出てくるでしょう。

 

             (文責 東京事務所 力武)

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