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報告書が投じた一石-改めて語られる不都合な真実…~週刊ひかり vol.13

2019.06.24 経営

 金融審議会の市場ワーキンググループが公表した「高齢社会における資産形成・管理」と題する報告書が波紋を呼んでいます。老後の生活を維持するには退職時に平均2,000万円の蓄えが必要であるとする報告書の試算が国民に不安や誤解を与え、政府の政策スタンスとは異なるという理由で所管大臣が受け取りを拒否し、金融庁の局長が謝罪するという異例の展開になっています。
 報告書は、夫が65歳以上で妻が60歳以上の夫婦のみの無職世帯の場合、毎月の平均収入が年金を中心に約21万円弱であるのに対して、支出は約26万円強であることから、毎月5万円を超える「赤字」が生じ、あと30年生きるとした場合、単純計算で「2,000万円不足」するとしています。この「赤字」と「2,000万円不足」という文言が不安を煽り、誤解を助長しているというのが所管大臣の言い分です。
 しかし、金融庁のホームページで公開されている金融審議会の資料や議事録を読めば、金額は総務省の調査に基づく厚労省の試算による平均であり、不足額は各々の収支の状況やライフスタイル等によって大きく異なると補足説明されていますし、老後に一定水準以上の生活を維持しようとすれば、公的年金だけでは十分でないことは周知の事実です。そもそも、報告書は、高齢社会が進行する中、資産形成やその管理について資産寿命を延ばすために国民が知っておくことが望ましい事項を整理することを目的にしており、年金問題を取り上げたものではありません。私たち公認会計士を所管するのも金融庁ですが、その役割は金融機能の安定を確保し、預金者や投資者の保護を図ることにありますから、年金制度について論ずる立場にないことは当然ですが、一連の騒動は図らずも年金問題に一石を投じることになってしまいました。
 こうして投じられた一石は、さらなる波紋を広げています。報告書が示した「2,000万円不足」は厚生年金加入者の場合であって、厚生年金に入れず国民年金のみに頼らざるを得ない人たちには更に厳しい現実が待っていることを浮き彫りにしました。「厚生年金は安定するが、国民年金は3割ほど目減りする見通し」、「経済がインフレになれば公的年金の支給額はインフレ率よりも低い率でしか増えない(つまり支給額が実質的に削減される)」という不都合な真実が改めて語られることになりました。私たちは年金という公助に頼らずに自助努力で明るく豊かな老後を設計する必要がありますが、件の報告書はその指南書として作成されたのですから、その意味では当初の目的は達成したと言えるのかもしれません。

 

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