閉じる

img_column.png

RPAの導入は人手不足解消の切り札となるか?~成功の秘訣は所内業務の標準化~

2018.08.08 経営

 最近、新聞や雑誌などで「RPA」という言葉を良く目にするようになりました。

 論調としてはRPAと呼ばれるロボットを導入することで業務が自動化され、人手不足の解消や業務時間の短縮などが実現するというものです。

 果たしてRPAを導入すれば本当に業務時間が短縮されて人手不足は解消するのでしょうか?

 ここではRPAの概要紹介と、有効に活用するために注意しておくべきポイントについて述べたいと思います。

RPAとは?

 RPAとは「Robotics Process Automation」の略称で、直訳すれば「ロボットによる業務の自動化」という意味になります。

 具体的には、専用のRPAソフトを導入することで、これまで人間が行ってきた定型的なパソコン操作をソフトウエアのロボットにより自動化するものです。

 例えばこれまで経理担当者が日々行ってきた、売上報告を販売管理ソフトに入力→集計資料をpdfなどで出力→メールで社長に送信、といった一連の業務がボタン1つで自動化できるようになります。

 最近の人手不足や働き方改革の流れの中で、生産性向上の手段としてRPAを導入する企業は増えており、総務省HP(http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/02tsushin02_04000043.html)に記載された平成29年の調査によりますと、国内では14.1%の企業がRPAを導入済み、6.3%が導入中、19.1%が導入を検討中とのことです。

 現在のところ、主に大手の金融機関や保険会社などにおいて、顧客情報や受注情報など同じ様な入力作業を大量に行う業務において導入が進んでいるようです。

RPAの機能、導入事例

 ではRPAを導入することで、どのような作業が自動化できるのでしょうか。

 先の総務省HPでは、RPAが適用可能な機能として以下のものが挙げられています。

  • アプリケーションの起動や終了
  • IDやパスワードなどの自動入力
  • スケジュールの設定と自動実行
  • キーボードやマウスなど、パソコン画面操作の自動化
  • ディスプレイ画面の文字、図形、色の判別
  • 別システムのアプリケーション間のデータの受け渡し
  • 社内システムと業務アプリケーションのデータ連携

 上記の機能を見ると、会社独自のシステムを起動してID・パスワードを入力してログインし、そこから必要なデータを吸い上げて、別途Excelの報告用シートの特定のセルなどに入力したうえ、報告資料を印刷したりpdfファイルでメールに添付して送信したり、という一連の業務を自動化することができます。

 なおかつ、これらの自動化作業をスケジュール設定しておくことで、特定の時間になれば自動的に実行することも可能となります。

 こうして見ると、会社内でパソコンを使って行う業務については大抵のことが自動化できるように思えます。そうした業務が多い会社にしてみれば、まさに夢のようなシステムと言えるでしょう。

 ではRPAの導入そのものに関してはシステム会社の支援を受けるとして、RPAを導入するだけで、果たして本当に業務が効率化するのでしょうか?

コツは社内業務の標準化

 いくらRPAを導入することで業務が自動化されるといっても、何もしなくても勝手に自動化されるわけではなく、導入したRPAのロボットに自動化したい業務のルールを覚えさせなければなりません。

 その際に会社の業務ルールが複雑・煩雑であればあるほど、RPAのロボットにそのルールを覚えさせることが大変になり、場合によっては人手が必要な部分が想像以上に残ってしまい、導入の効果が得られない可能性もあります。

 改めて会社の業務を見直してみると、「昔から何となく続けているから」「あのお客さんはうるさいから」などの理由で、よく意義を理解しないまま手間の掛かる方法で業務を行っていたり、所定の社内ルールとは異なる方法で対応していたりすることがあります。 よく顧問先に対して経理業務などの効率化についてお話をすると、「うちの会社は業務処理方法が独特だから変えるのは難しい」と言われることがあります。しかしその独特な業務処理方法が会社にとって本当の意味で有効なケースは少ないように思います。

 会社がお客様に提供する商品やサービスが独特であることは会社の競争力を高めますが、内部の業務処理方法や経理処理方法が独特であったり例外処理が多いことは、それだけ所内の業務処理が複雑・煩雑であることを示しており、逆に競争力を低下させるリスクになっていることがほとんどです。現在のような人手不足が続く昨今では、そのリスクが既に顕在化しているケースも多く見られます。

 その意味ではRPAの導入に限らず、人手不足に対応したり会社の競争力を高めるうえでも、既存業務の見直しと処理方法の標準化が重要になります。

「お客様にとって本当に重要か?」

 業務を見直す際に重要なポイントは、その業務が「お客様にとって本当に重要か?」という視点に立つことです。

 例えばある会社では、売上の締切日が到来すると経理担当者が何時間も掛けて請求書を印刷し、封筒に詰め、切手を貼り、郵便局に発送に行っていました。一方で別の会社では、オンライン発行が可能な販売管理システムにより、システムが自動でメールやFAXによって請求書を発行しており、請求書の発送に特別な時間は使っていません。

 会社のお客様にとって、両社の業務処理方法の違いは取引に影響を及ぼすでしょうか?もちろん大半のお客様にとって、請求書がどのような形式で届くかは重要ではありません。このようなお客様のニーズに合わない部分で必要以上に時間・コストを要しても、本当の意味での付加価値(自社の強み)とはなりません。

 逆に例えば「きめ細やかな納品対応」が会社の強みや収益力の源泉になっている場合に、「来月から当社の納品は一律で週1回にします」などとすると、業務の見直しや標準化をしたことでむしろ会社の競争力を弱めてしまう可能性があります。

 つまり「お客様にとって本当に重要な部分」についてはきめ細やかな対応をする一方、それ以外の領域についてはできるだけ業務をシンプルにすることが業務を標準化するうえで重要な考え方となります。

 そしてシンプルになった業務をRPA導入によって自動化することができれば、更に業務効率は上がるでしょう。

まとめ

最近のトレンドキーワードとなりつつあるRPAについては、よく知らない人から見れば、人手不足を解消してくれる夢のようなツールに見えるかも知れません。

 しかしRPAはあくまでPCで行う業務を自動化するためのツールに過ぎません。逆に言えば、元から無駄・ムラがある業務は、いくら自動化したところで無駄・ムラがあることには変わりありません。

 むしろRPAの導入を検討する前に、既存業務をゼロベースで見直して標準化・可視化を行うことが重要です。

 そうすることで業務の流れが明確かつシンプルになり、そこにRPAを導入することで業務の効率化が更に進みます。それによって人材を含めた会社の経営資源を、より会社の強みに向けることで会社の競争力を高める。それが本当の意味でのRPA導入の成果(ゴール)と言えるのでは無いでしょうか。

コラム一覧へ